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日本はなぜペット飼育可能物件が少ないのか?理由と物件探しのポイントも紹介

柿本 剛司

筆者 柿本 剛司

「なぜ日本ではペットと共に暮らせる賃貸物件が少ないのでしょうか?」ペットを大切な家族と考える方にとって、住まい選びは大きな悩みの一つです。実際に物件を探しはじめると、思いのほか希望通りの住まいが見つからず、困った経験をされた方も多いのではないでしょうか。この記事では、日本におけるペット可物件の現状やその背景、少ない理由、今後の動き、そしてペット飼育者が物件選びの際に押さえておきたい注意点を分かりやすく解説します。ペットも人も心地良く過ごせる住まい探しのヒントを、ぜひご覧ください。

日本におけるペット可物件の現状

近年、ペットと共に暮らしたいと考える方が増えている一方で、ペット飼育が可能な賃貸物件(以下、ペット可物件)の供給は依然として限られています。2025年3月時点で、大手不動産情報サイト「LIFULL HOME'S」に掲載されているペット可物件の割合は全体の19.3%にとどまっています。これは4年前の12.9%から上昇しているものの、依然として全体の2割にも満たない状況です。

都市部と地方でのペット可物件の分布にも差があります。例えば、東京23区内では、ペット可物件の割合が区によって異なり、中央区では31.5%と高い一方、江戸川区では3.8%と低い数値が報告されています。

ペット可物件の需要と供給のバランスを考えると、ペットを飼いたいと考える方が増加しているにもかかわらず、供給が追いついていない現状が浮かび上がります。

区名 ペット可物件割合 特徴
中央区 31.5% ペット可物件の割合が高い
江戸川区 3.8% ペット可物件の割合が低い

ペット可物件が少ない主な理由

日本においてペットと共に暮らせる賃貸物件が限られている背景には、主に以下の三つの理由が挙げられます。

まず、ペットによる室内の損傷や臭いが、物件の価値低下につながることへのオーナーの懸念が大きいです。ペットが壁や床に傷をつけたり、特有の臭いが染みついたりすることで、退去後の原状回復費用が高額になる傾向があります。これにより、オーナーは修繕費用の負担や物件価値の低下を避けるため、ペットの飼育を禁止するケースが多いです。

次に、鳴き声やアレルギーなど、他の入居者とのトラブル発生の可能性も考慮されています。ペットの鳴き声が騒音問題となったり、動物アレルギーを持つ入居者への配慮が必要となるため、オーナーは住民間のトラブルを未然に防ぐ目的でペット不可とすることがあります。

さらに、ペット可物件にするためのリフォームや設備投資にかかるコストも大きな要因です。防音対策やペット専用設備の設置など、初期投資が必要となり、これらの費用負担を避けるためにペット不可とするオーナーも少なくありません。

以下に、ペット可物件が少ない主な理由をまとめた表を示します。

理由 詳細
室内の損傷や臭い ペットによる壁や床の傷、特有の臭いが物件価値を下げ、修繕費用が高額になる。
他の入居者とのトラブル 鳴き声による騒音やアレルギー問題が発生し、住民間のトラブルの原因となる。
リフォームや設備投資のコスト 防音対策やペット専用設備の設置など、初期投資が必要となり、費用負担が大きい。

これらの要因が複合的に絡み合い、日本ではペット可物件が少ない現状となっています。

ペット可物件を増やすための取り組みと課題

ペットと共に快適に暮らせる住環境を求める声が高まる中、ペット可物件の拡充に向けたさまざまな取り組みが進められています。しかし、その実現にはいくつかの課題も存在します。以下では、具体的な事例や取り組み、そして直面する課題について詳しく解説します。

まず、ペット共生型マンションの成功事例として、旭化成ホームズの「+わん+にゃん」が挙げられます。この物件では、入居者専用のウェブサイトを通じて、しつけ教室や撮影会、獣医師によるセミナーなど、多彩なイベントを開催しています。これにより、入居者同士のコミュニティ形成が促進され、ペットと飼い主双方の満足度が向上しています。さらに、ペット専門のスタッフが入居審査を行い、しつけ状況や飼育環境を確認することで、トラブルの発生を未然に防いでいます。

また、野口グループが開発した「シュシュパルク」は、ペットと暮らすための専用マンションとして、ペットの足洗い場やトリミングルーム、広いユニットバスなど、ペットと快適に暮らすための設備を備えています。これにより、ペット可物件との差別化を図り、高い入居率と収益を実現しています。

しかし、ペット可物件を増やすためには、いくつかの課題も存在します。まず、物件オーナーや管理会社がペット可物件に対する理解を深めることが重要です。ペット共生型マンションの成功事例を学び、適切な管理体制や設備投資の必要性を認識することで、ペット可物件の供給が促進されます。

さらに、ペット飼育者が守るべきマナーやルールの徹底も欠かせません。鳴き声や臭い、共用部分の使用方法など、他の入居者とのトラブルを防ぐためのルールを設け、それを遵守することが求められます。これにより、ペット可物件の信頼性が向上し、さらなる供給拡大につながります。

以下に、ペット可物件を増やすための取り組みと課題をまとめた表を示します。

取り組み 具体例 課題
ペット共生型マンションの導入 「+わん+にゃん」「シュシュパルク」などの事例 初期投資や管理体制の整備が必要
オーナー・管理会社の理解促進 成功事例の共有、セミナーの開催 意識改革や教育の時間とコストがかかる
飼育者のマナー向上 ルールの策定、しつけ教室の開催 ルール遵守の徹底が難しい場合がある

ペット可物件の拡充には、物件提供者と入居者双方の協力が不可欠です。成功事例を参考にしながら、適切な取り組みを進めることで、ペットと人が共に快適に暮らせる住環境の実現が期待されます。

ペット飼育者が物件を探す際のポイントと注意点

ペットと快適に暮らせる住まいを見つけるためには、特有のポイントや注意点を押さえることが重要です。以下に、物件探しの際の具体的な方法や契約時の確認事項、周辺環境の考慮点について詳しく解説します。

まず、ペット可物件を効率的に探すための方法やツールを紹介します。

ペット可物件は全体の賃貸物件数に比べて少ないため、探し方に工夫が必要です。以下の方法を活用すると、より効率的に物件を見つけることができます。

方法 詳細
エリアを広げる 希望エリアを広げることで、ペット可物件の選択肢が増えます。例えば、駅から徒歩10分以内にこだわらず、バス利用や隣駅まで範囲を広げると良いでしょう。
条件を柔軟にする 築年数や間取りなどの条件を緩和することで、該当する物件が増えます。リノベーション済みの物件も視野に入れると良いでしょう。
不動産会社への相談 「ペット相談可」と記載された物件でも、交渉次第でペット飼育が可能になる場合があります。詳細な情報を不動産会社に伝え、交渉を試みましょう。

次に、契約時に確認すべきペット飼育に関する条件や制限事項について解説します。

契約前には、以下の点を必ず確認しましょう。

- 敷金・礼金の増額:ペット飼育により、敷金や礼金が通常より高く設定されている場合があります。例えば、敷金が1~2ヶ月分追加され、その一部が償却されるケースもあります。 - 飼育可能なペットの種類やサイズ:物件によっては、小型犬のみ可や猫不可など、飼育可能なペットの種類やサイズに制限があることがあります。 - 飼育細則や特約:共有部分でのペットの移動方法や、騒音対策など、具体的なルールが定められている場合があります。契約書や管理規約をしっかりと確認し、遵守することが求められます。

最後に、物件選びの際に考慮すべき周辺環境や設備のポイントを述べます。

ペットと快適に暮らすためには、物件の周辺環境や設備も重要です。以下の点をチェックしましょう。

- 動物病院やペットショップの有無:近隣に動物病院やペット用品店があると、緊急時や日常のケアに便利です。 - 散歩コースや公園の存在:犬を飼育している場合、近くに安全な散歩コースや公園があると、日々の運動に適しています。 - 交通量や騒音レベル:交通量が多いエリアは、ペットの安全やストレスに影響を与える可能性があります。静かな環境を選ぶことが望ましいです。

これらのポイントを踏まえて物件を選ぶことで、ペットと共に快適な生活を送ることができるでしょう。

まとめ

本記事では、日本におけるペット飼育可能な賃貸物件がなぜ少ないのか、その背景や課題について解説しました。物件の価値維持や近隣トラブルといった懸念が大きく影響していますが、ペット共生型物件など新たな試みも始まっています。ペットと心地よく暮らしたい方は、最新の動向に注目しつつ、マナーや契約条件を丁寧に確認することが大切です。これから物件探しを始める皆様の参考になれば幸いです。

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